ここに記述した文書は、すべて医師または薬剤師の漢方薬処方箋解説です。医薬品購入使用者の口コミ情報ではありません。
【大柴胡湯の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。
54歳男子。
ガッチりした体格の精力的な男性。
数年前から便秘がちとなり、種々の売薬をのんでみたが、一向に軽快しない。脈、腹ともに十分に力があり、右季肋下に強い胸脇苦満が認められた。肩こりも訴える。
典型的な大柴胡湯証とみて投与すると、毎朝1行快便が得られるようになった。
現代病名:便秘
50歳の男性。
サラリーマン。体格はガッチりしているし、筋肉もよく発達しているが、顔色はどす黒い。神経はこまかい人である。心下のつかえがあり、上腹部が張っていて、便秘気味で、慢性胃炎と診断された。痛みと吐き気が時々あるという。血圧は高くない。大柴胡湯を服用したところ、痛みと吐き気がなくなり、体にしまりが出てきたと喜んで報告してきた。続けて服用して完治した。
現代病名:慢性胃炎
グルメなNさん(61歳・男性)は、大変な美食家で、どちらかというと脂肪太りです。
夕食に豪華な中華料理を食べた日のことでした。夜中に右上腹部が猛烈に痛くなり、どうしようもなくなって、救急車で病院に運ばれました。診察を受けると、胆石発作であることが分かったのです。
病院では手術を勧められましたが、どうしても手術が怖くて踏み切れません。どうしたらいいのか悩みました。
そこで病院には黙って、以前かかっていた漢方専門の薬局に相談に行きました。漢方薬を飲むだけで、うまくすれば数日で石が出ると聞いて、さっそく飲みはじめることにしました。処方された漢方薬は大柴胡湯と生薬の金銭草(マメ科ギンセンソウなどの草)との合方でした。
驚いたことに、なんと5日で石が出たそうです。それでも、再発しないよう、Nさんはしばらく大柴胡湯を服用することにしました。
現代病名:胆石症
商店主のHさん(50代・男性)は、高血圧に加え、血清脂質全般の検査値が高く、かかりつけの病院の医師から、動脈硬化に気を付けるようにいわれていました。薬はもらっていましたが、毎晩かなりお酒を飲むために服用を怠りがちです。めまいや肩こりに悩まされていたのですが、自分では、それも軽い二日酔いのせいだと思っていました。しかし、とうとう医師に禁酒を指示
されたことから、思い立って漢方薬局を訪れました。
がっしりした体格で太り気味、みずおちに強い圧迫感を覚えるというHさんに、薬剤師は大柴胡湯を勧めました。飲酒する日にも服用するようにいわれ、しばらく飲み続けたところ、不快な症状が和らぎ、血圧、コレステロール値と中性脂肪値が若干落ち着いてきました。
現代病名:高脂血症
会社重役のSさん(57歳)は、脂肪肝のために病院で治療を受けていました。
血圧も高く、降圧剤(血圧を下げる薬)を飲まないと最大血圧が200㎜Hgぐらい、きちんと薬を飲んでいても、170㎜Hgを切ることはありませんでした(最小血圧は100㎜Hg)。体質改善のために食事を制限しようとしても、仕事柄つきあいの席が多く、なかなか思うようにいきません。思い余って、漢方を処方する医師を訪ねました。
がっしりした体格のSさんは、胸脇苦満があり、典型的な実証タイプです。便秘傾向が強いことから、医師は、大柴胡湯に大黄を加えた薬を処方しました。すると、3、4ヵ月で血圧が下がりはじめ、今は150~160㎜Hgに落ち着いています。
降圧剤は切れませんが、漢方の体質改善効果で血圧のコントロール状態がよくなったのです。
現代病名:高血圧
53歳の主婦、最近とみに肥満が進み、主治医からも高血圧を指摘されていましたがあまり気にもとめず放置していました。
ここ一ヶ月位、何か頭にものが刺さっているような気がし、肩がこります。時々頭に血がのぼる感じでのぼせます。少し歩くだけで動悸がして息切れがするようになりました。診察室に現われた患者さんは身長一六〇センチ、体重六五キロ、大柄でがっしりとした固太りの中年夫人です。血圧は一九七/一一六、脈は非常に力強く打っています。
腹診すると腹壁は厚く、上腹部は全体に強く緊張しています。漢方で心下満と呼んでいる腹証です。のぼせの症状と心下満の腹証、それにこの方は便秘があるということでしたので、大柴胡湯エキスを上げることにしました。
この薬を始めて一週間日、まず便通が良くなり、肩こりがとれ何だか体が軽くなりましたということでした。約一年後には、血圧はいつの間にかすっかり正常値になり、初め高かった血中コレステロールを始めとする血中脂質も正常の数値に落ち着きました。
現代病名:高血圧
出典:「いのちを養う漢方講座」 発行所:葦書房(2000) 医師:高山宏世
保育園児のT君(5歳)は、精神安定剤の投薬を受けていましたが、睡眠障害やパニック障害が治まらないため、両親は漢方治療を求め、大柴胡湯が処方されました。
服用を続けると、まず睡眠障害が改善され、症状全体が落ち着きました。
すると保育園で周囲の子どもと遊ぶようになり、T君の会話能力は著しく伸びていったのです。小学校は普通学級に進み、学校の出来事を母親に報告できるようにもなりました。
13歳で漢方薬の服用をやめましたが、その後も症状は安定し、再発することはなかったそうです。
現代病名:自閉症
公務員のKさん(45歳)は、健康診断で肝機能値が高いことが分かり、慢性肝炎と診断されて、すぐに入院しました。安静にして高たんぱく、高カロリーの食事療法を受けると、じきに回復し、退院できました。
しかし、職場に復帰するとすぐに悪化し、3回、入退院を繰り返してしまいました。そこで、仕事上の不安から漢方研究医に相談したのです。
Kさんは筋肉質のがっしりした体格で、便秘がち、腹診を受けると、右の肋骨の下に胸脇苦満が認められました。
漢方薬の大柴胡湯が処方され、食事療法として副食を野菜、大豆、小魚、海藻中心に切り替えた粗食を指導されました。1ヵ月後には運動を始めるよういわれ、その際、一時的に肝機能値が悪化しましたが、「間もなく元に戻りますよ」と説明され、さらに半年、漢方薬を続けました。
経過は順調で、1年半の治療で完治したのです。
現代病名:慢性肝炎