ここに記述した文書は、すべて医師または薬剤師の漢方薬処方箋解説です。医薬品購入使用者の口コミ情報ではありません。
【柴胡桂枝乾姜湯の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。
43歳、会社員。
数ヶ月前からの異常な疲労感の持続に不安を感じて受診。慢性肺炎と診断されて、強力ミノファーゲンの注射やその他の治療を受けているが、よくならないと言って私の所へ来院しました。体格は中等度でしたが、血色がやや不良で、舌にはやや乾燥した白苔が同等度にあり、脈は弦、腹力は中等度よりわずかに軟、両腹直筋はわずかに緊張し、心下宿硬が軽度みられます。胸脇苦満も右に軽度で、房の上下一横指の付近に腹大動脈の拍動を触れます。上腹部に比べ、下腹部の腹力が弱い、即ち瞬下不仁が認められます。自覚的には、疲れやすい、口が渇く、食欲があまりないなどの症状があります。この症例はまさに柴胡桂枝乾姜湯の典型的な状態です。瞬下不仁は八味丸の適応症です。これらの自他覚的症状の組合わせによって柴胡桂枝乾姜湯を主方とし、八味丸を兼用として投与し、2年6ヶ月でほぼ全治しました。その後も元気な生活を送っています。
現代病名:慢性肝炎
52歳、独身女性。
子宮全摘の手術後に肝炎をやり入院、退院してからも臨床検査のデータが悪いので、病院から投薬されていたが、寝汗が毎晩、数回出て困るという。そのためカゼをひきやすい。気分もイライラするし、疲労が激しいという。柴胡桂枝乾姜湯の服用で、寝汗は出なくなり、元気になってきた。肝機能検査の成績も正常になり、仕事ができるようになった。
現代病名:寝汗
Uさん(45歳・男性)は、会社には毎日休まず通っているものの、日ごろから虚弱で疲れやすく、かぜをひきやすい体質でした。
特に最近は寝汗がひどく、ほかにも尿の量が少ない、口が渇く、口が苦いなどの不快な症状がいろいろ出ていました。なんとか体質を改善したいと、漢方薬局で相談すると、柴胡桂枝乾姜湯のエキス剤を処方されました。服用を始めて20日ぐらいで効果が現れはじめ、パジャマの着替えのために夜中に起きることもなくなりました。
現代病名:体賃改善
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
Tさん(60代)は貧血気味で、どちらかというと体力がない女性です。
このところ、疲れがひどいように感じ、食欲も落ちていました。そういうことは昔からよくあつたので、大変な病気だとは思いませんでした。しかし、今回は、年齢的にそろそろ体をいたわらなければという思いもあって、近くにある漢方薬局の薬剤師に相談に行ったのです。
口の中が渇く上、肩がこって困るというTさんの訴えを聞いた薬剤師は、彼女の体調のほかの面もチェックしました。
冷えがあり、そのわりに尿の量が少ない、頭や首の周りにだけ汗をかく。寝汗をかくこともあり、動悸や息切れがするといった点を踏まえて、Tさんは、柴胡桂枝乾姜湯を勧められました。この薬を飲み続けるうちに、口の渇きが気にならなくなり、およそ2週間後には、体調がよくなったということです。
現代病名:口渇
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
中学校の教員を勤める53歳のK子さん。
やせ型で顔色が悪い虚弱体質です。近年胃の辺りが重く、口が渇いて不快で、実際にはにおわないのに強い口臭があると思い込んでしまいました。
漢方も活用している医院に行くと「実はあなたは口臭などないが、これをどうぞ」と柴胡桂枝乾姜湯を勧められました。服用して2週間で口の不快感がなくなり、半年後には胃の重さも消え、それと平行して口臭も消えたと実感したそうです。心因性口臭の思い込みが解けたのです。
現代病名:胃腸障害
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
夫とともにクリーニング店を切りもりしているJ子さん(52歳)。
わりあい元気で、大きな病気もなく毎日忙しく過ごしてきました。しかし、50の声を聞いてから生理が遅れ気味になり、肩こりやめまいに悩み始め、気分がふさいで接客もおっくうになってきたのです。また、ときにはイライラして夫にあたり、あまりしなかった夫婦喧嘩まで頻発する始末でした。
隣の漢方薬局の老店主がJ子さんのそんな様子に気付き、女神散と柴胡桂枝湯を勧めてくれました。服用し始めて3週間ほどで肩こりとめまいが治まり、さらに1ヵ月後には、気鬱もイライラもなくなりました。J子さんの回復を最も喜んでいるのは、八つ当たりの的だった夫だということです。
現代病名:更年期障害
Tさん(45歳・女性)は、目の乾きで眼科を受診した際、シェーグレン症候群と診断され、その後すぐ、漢方を扱う医院を訪れました。実はTさんは、数年前にも目がショボショボする、ゴロゴロするといった不快症状があって、苓桂朮甘湯で治ったことがあるのです。
今回は、イライラなどの神経症状もあり、足腰は冷えているものの上半身は暑いといった症状を伴っていたことから、柴胡桂枝乾姜湯と苓桂朮甘湯加附子が処方されました。これを飲んで4ヵ月後には目の乾きがほとんど気にならなくなり、今回もまた漢方薬に助けられたと、とても喜んでいます。
現代病名:シェーグレン症候群
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
建設会社で現場監督を務めるHさん(45歳・男性)は、毎日工事現場で砂やほこりにまみれながら大声を張り上げて仕事をしています。体力に自信があった若いころは、仕事を終えると職人たちと必ず酒盛りをしてから帰宅していました。
ところが、40歳を過ぎたころから疲れやすくなり、特に2~3年前からはかぜをひきやすく、すぐにのどの不調や腫れ、痛みを感じるようになりました。
重大な病気がのどの痛みとなって現れているのではないかと心配した奥さんは、Hさんを説得して漢方を扱っている病院へ連れていきました。担当医師は慢性咽頭炎と診断し、柴胡桂枝乾姜湯を処方しました。この処方は、肝機能を高め、抵抗力をつけ、体を温めてのどの炎症を和らげるというものです。
Hさんが、指示どおりにひと月ほど服用したところ、のどの痛みが和らぎ、その上尿の出がよくなるなど、体調も見ちがえるほどよくなりました。予期せぬ効果に喜んだHさんは「漢方は奥深い」と思いながら、今もこの薬を飲み続けています。
現代病名:慢性咽頭炎
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
Mさん(70歳・女性)は、しょっちゅうかぜをひいては寒気に悩まされていました。そのため、いつも帽子をかぶり、風の強い日には外を出歩かないようにしていたほどです。
お風呂に入っても、なかなか体が温まらず、特に背中がゾクゾクしているような状態で、訪れた漢方薬局では柴胡桂枝乾姜湯を処方されました。
飲みはじめてから1週間ぐらいで体が温かく感じられるようになり、寒気はしなくなりましたが、これを飲んでいると調子がいいと、その後も飲み続けています。
現代病名:寒気
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
慢性胆嚢炎と診断されたMさん(35歳・男性)は、経過観察中で激しい症状はないものの、背中の重圧感や食後の胃部の不快感に悩んでいました。そこで、漢方薬も処方する医院を受診しました。
やせ型で神経質、尿量が少ないというMさんに処方されたのは柴胡桂枝乾姜湯です。朝夕2回の服用を続けていたところ、背中の重苦しさが徐々に取れてきました。
こうして、半年後には自覚症状がまったくなくなりました。そこで、最初に受診した大学病院で検査をしたところ、胆嚢炎はすっかり治っているとのお墨つきをもらったそうです。
現代病名:慢性胆嚢炎
慢性膵炎を患うYさん(38歳・男性)は、西洋医学での治療で痛み止めの薬を飲んではいるものの、一進一退を繰り返すだけの病状に悩んでいました。膵臓の炎症を示すアミラーゼ(消化酵素)の値も高く、糖尿病を発症する可能性もあり、毎日が気掛かりで仕方なかったそうです。
思い余ったYさんは、漢方を用いる医院を受診しました。やせ型で体カがなく、動悸や不眠を訴えるYさんに処方されたのは、柴胡桂枝乾姜湯です。
飲みはじめて3ヵ月もすると、アミラーゼ(消化酵素〕の値が正常値に戻るのに伴って西洋薬の量が減り、1年後にはすっかりよくなったそうです。
以来漢方薬を常に携帯し、飲み続けているそうですが、ここ3年間は全く発作が起こっていないとのことです。
現代病名:慢性膵炎
会社員のJさん(33歳)は、あるとき異様な疲れを感じて病院に行ったところ、急性肝炎と診断され、即入院することになりました。
その後、本人はほどなく元気を回復したのですが、2ヵ月たっても肝機能値が下がらないため、退院の許可がなかなか下りません。肝機能を示すGOT、GPTの検査値が、ともに200ぐらいあるという状態だったのです。
母親が心配して、かねて知っている薬局の薬剤師に相談しました。体格は普通で、黄疸は出ていないというと、柴胡桂枝乾姜湯という薬が出されました。Jさんは、早速この薬を飲みはじめました。
すると、肝機能値がみるみる下がりはじめ、1ヵ月後には正常値になって、担当医に退院を許されたのです。医師は、この変化にすっかり驚いていたといいます。
退院後、Jさんは柴胡桂枝乾姜湯を1ヵ月飲み続け、すっかり元気になりました。
現代病名:急性肝炎
55歳の女性。
現病歴:日頃からあまり丈夫な方ではないが大病を患ったことはない。2ケ月前に風邪を引き、一応治癒したが、何となく微熱が続き、時々背中に悪寒を感じる。足が冷えて、もう5月になるというのに夜はアンカが離せない。夜は時々寝汗をかく。咳タン共にない。何か悪い病気が隠れているのではないかと心配して来診。
望診:やせ型であまり顔色は好くない。
舌診:舌は湿って赤味が少なく、薄い白苔が付着。
脈診:脈は沈んでいるがやや弦。
腹診:胸部の呼吸音も正常。お腹は軟かく、みぞおちの辺りに少し抵抗があって押さえると痛い。(心下微満結)膀上に動悸を触知。季肋部の辺りもやや緊張(胸脇苦満)。
検査:念のためにレントゲンや検査もしたが全く異常は見られない。この方は体力が弱くて気血共に不足した状態で病気を完全に追い出すだけの抵抗力がないためにカゼ症状が長引いていると考えられた。
処方:微熱と悪寒を取るのに紫胡桂枝乾姜湯を投与した。
経過:約!週間後、熱も寒気もおおかたとれた所で、気虚の微熱を去り、元気をつける目的で補中気益湯を一週間投与して完全に平熱に戻った。
現代病名:微熱
出典:「弁証図解 漢方の基礎と臨床」 発行所:葦書房(2003) 担当医師:高山宏世
47歳の女性。
二日前から微熱と寒気があり、頭痛、鼻汁、咽頭痛があります。体の節々が少し痛く全身がだるく感じます。咳はありません。何となく身体が汗ばみ、風に当るとゾクゾクと寒気がします。
患者さんはやせ型で、背中の辺りを手で当ると何となく汗ばんだ感じです。
体温は36.8度、血圧116/71で、脈は63/分。脈は軽く触れると榑動しますが、ちょっと押さえると消える浮弱という脈です。
咽頭は少し赤味が増しているようですが、舌は湿って薄い白苔が少し付いていて特別に変わったことはないようです。胸部の聴打診も、漢方的な腹診でも異常はありません。
そこで桂枝湯のエキス剤を二日間飲んで頂きました。とても気分は良くなりましたが、夕方になると微熱があり、夜、寝汗をかいて安眠できないとの事ですので、今度は柴胡桂枝乾美湯のエキス剤を処方し、三日間服用して全快しました。
現代病名:頭痛、鼻汁、咽頭痛
ポイント:漢方の風邪薬は患者さんの症状と体質に合った処方を与えると、不愉快な眠気や胃腸障害を起こすこともなく自然に気持良く治せるのが特徴です。
出典:「いのちを養う漢方講座」 発行所:葦書房(2000) 担当医師:高山宏世