ここに記述した文書は、すべて医師または薬剤師の漢方薬処方箋解説です。医薬品購入使用者の口コミ情報ではありません。
【桂枝加竜骨牡蛎湯の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。
小学校を卒えて、某会社の給仕になっている13歳の男子。
最近、いろいろなことが気にかかるようになり、わかり切ったことを、くりかえしくりかえし、家族に言うようになり、頭が重く、のぼせて、足が冷え、耳が鳴る。母親のみるところでは、早熟の気味で、自涜の行為があるらしいという。
桂枝加竜骨牡蛎湯を与える。これを8週間ほどのむと、気分がおさまって、すっかりよくなり、元気で働くようになった。
この患者は、三黄瀉心湯の証のようにも思われたが、自涜行為のあることや、足が冷えるという症状があるので、桂枝加竜骨牡蛎湯にした。この方で、のぼせ、耳鳴り、めまい、足冷えがよくなることがある。
現代病名:頭痛、のぼせ、足冷、耳鳴
42歳の女子。
農家の主婦で、1年ほど前から、のぼせが強くなったり、足腰が冷えたりする。気分も沈みがちで仕事が手につかない。何個所かの病院でみてもらったところ、自律神経失調症という診断で、安定剤などを投与されたが、好転しないという。
中肉中背の女性で、多少赤ら顔である。脈力、腹力は中等度よりやや弱い程度。瞬上悸を認める。そうはつきりしてはいないが、多少背中が熱くなったり、寒くなったりする傾向があったので、加味道造散を投与した。ところが1ヶ月服用させても好転しない。相変わらず仕事が手につかないという。そこで膀上悸があること目標にして、桂枝加竜骨牡蛎湯に転方した。これが大変よく効き、とんとん拍子に体調がよくなって、約3ヶ月で農作業もできるようになった。
現代病名:自律神経失調症
Hさん(60歳・女性)はイライラして落ち着かず、眠りも浅く、夢の中でもイライラするほどでした。
毎年、春先になると、1日に3回ぐらいイライラして、精神不安に襲われます。病院では特に異常はないといわれ、漢方専門の薬局に相談に行きました。
薬剤師から「夢を見ずに眠れるようにしましよう」といわれ、加味逍遙散と就寝前にだけ服用する桂枝加竜骨牡蛎湯を処方されました。その後、半年たった今では、3日に1度軽いイライラがある程度にまで回復しました。
現代病名:イライラ
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
高校教師のNさん(45歳・男性)は、ある年から3年生のクラス担任になりました。大学受験を控えるクラスを受けもつことになったのです。Nさんは、何とか全員を合格させたいと思い、相当に心労が重なっていたようです。
夏休みも過ぎて、いよいよ受験シーズンが迫ってきたころに、Nさんの髪の毛が抜けることが多くなりました。同時に不眠と悪夢に悩まされることが多くなり、髪も目に見えて薄くなってきたので、心配になって漢方を扱っている医院を訪れました。
医師の診断では、心的なストレスが原因の抜け毛とのことで、桂枝加竜骨牡蛎湯に四物湯を加えた漢方薬を処方されました。1ヵ月ほど飲み続けていると次第に頭髪が戻ってきたそうです。
現代病名:脱毛症
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
Y子さん(22歳)は芸術系の大学の学生です。
それまでは、拒食症などとはまったく無縁の健康的な生活を送っていたのですが、大学3年生のときに担任となった教授と意見が合わず、それが精神的なストレスとなり、食欲不振と食べては吐くという生活が半年ほど続いていました。Y子さんは比較的体格がよく、体重も60kg近くあったのですが、50kgを切るまで減少してしまい、周囲からも「すごくやせたね」と心配されるようになってしまったのです。
不安になって、かかりつけの漢方を扱っている病院に行くと、拒食症と診断されました。処方されたのは精神的なストレスに効果のある桂枝加竜骨牡蛎湯と体力を回復するための四君子湯でした。また、原因が担当教授との人間関係にあると本人も分かっていたので、医師にも担当教授を代えてもらうようにすべきと勧められ、すぐに大学に交渉して別の教授につくことにしました。
その後2ヵ月ほどは食べられない状態が続きましたが、精神的なストレスがなくなったこともあり、徐々に食欲が戻り、体力も回復してきたそうです。
現代病名:拒食症
A君は、小学2年生の男の子です。西洋医学はもちろん、薬局で勧められて小建中湯も試してみましたが、夜尿症が治りませんでした。
漢方に詳しい医師が話をよく聞くと、お母さんが神経質で、妹に「またお兄ちゃん、やつちゃったのよ」などといいながらふとんを干し、カレンダーに夜尿症回数の○×まで付けていたといいます。
医師はお母さんに、兄のプライドを傷つけないように話し方を指導し、本人には気にしなくていいと安心させる助言をしました。なかなか寝つかれないというので、桂枝加竜骨牡蛎湯を服用させ、カレンダーの○×などストレスになることをやめさせて様子を見ました。
すると最初は毎日だった夜尿症が、週に3回、2回と減るようになり、2ヵ月ほどですっかり治りました。お母さんも精神的な負担をかけないように努力したので、その効果も大だったようです。
現代病名:おねしょ
職場のストレスが原因で激やせし、半年ほど前からは月経も止まってしまったHさん(23歳・女性)です。
気分も落ち込み、仕事をする気も起こらなくなり、会社も休みがちになってしまいました。
心療内科を訪れたのですが、ホルモン状態は正常、特にこれといった病気はないとのことで、納得のいく結果は得られませんでした。気力低下に加え、めまいなどの症状も出てきたHさんは漢方を処方する医院を訪れました。
処方されたのは、気のめぐりを改善する桂枝加竜骨牡蛎湯と血のめぐりをよくする当帰芍薬散です。当初は「どうせ治らない」と消極的だったHさんですが、飲み続けて2ヵ月半後に体重が1kg戻りました。
この時期に会社を辞めたこともHさんのプレッシャーやストレスを取り除くことになったのでしょう。気持ちに余裕ができたためか、漢方薬での治療も次第に前向きにとらえられるようになってきたのです。
この後も体重は順調に戻り、3ヵ月後には月経がありました。
1年後には体重も元に戻り、月経も毎月、正常にくるようになりました。Hさんは、体調もよくなった上、前向きな性格になったと喜んでいます。
現代病名:無月経
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
Fさん(35歳・男性)は、数年前に結婚して以来、精力が衰えて悩んでいました。最初のころは精力増強剤などを通信販売で購入していましたが、今ひとつ効果が現れません。妻からも子どもが欲しいと常にせがまれ、精神的にも疲れ果ててしまいました。
そんな折、会社の同僚に冗談めかして相談したところ、漢方がいいよと勧められたそうです。Fさんはそれまで漢方薬を使ったことがなかったので多少不安を覚えましたが、このままではいずれにせよ状況は変わらないと思い、近所の漢方薬局に相談することにしました。
漢方の先生は、Fさんがやせていて顔色が悪く、食欲も衰えていることから、桂枝加竜骨牡蛎湯を処方しました。Fさんが毎日3回欠かさず飲み続けたところ、2週間もすると徐々に精力が回復してきたそうです。
今では学生時代のときのように元気な性生活を送っていると、笑って答えてくれました。
現代病名:インポテンス
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
小学校3年生のS子ちゃんは、1年生のときに円形脱毛症になり、だんだん進行して頭髪が全部抜けてしまいました。脱毛は頭髪だけで止まらず、ついには眉毛もまつげもない全身脱毛になってしまったのです。脱毛とともに、手足の冷えもありました。
おさげのかつらをつけて病院に通い、西洋医学の治療を受けましたが、十分な効果はなかったといいます。
母親が、漢方も活用している医院に連れて行って相談すると、桂枝加竜骨牡蛎湯を煎じ薬で飲むように勧められました。
エキス剤より、煎じ薬の方が高い効果があるということでした。半年ほど服用を続けると、少し毛が生えてきました。
その後、抜けたり生えたりを何度か繰り返しながら、徐々に生えそろい、時間はかかりましたが、小学校を卒業するまでには、かつらが不要になるまでに回復したのです。
現代病名:円形脱毛症
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
主婦のWさん(40歳)は、数年おきに円形脱毛症を繰り返しているため、バンダナを巻いた上から帽子をかぶるというのが外出時のスタイルになっていました。
そんなWさんがある日、漢方薬を扱う皮膚科を訪れました。体力が比較的低下気味で神経質なWさんに、医師が処方したのは桂枝加竜骨牡蛎湯でした。
1日3回飲み続けていると、2ヵ月を過ぎたころから産毛のような頭髪が生えてきました。Wさんは、今まで同じ病気を繰り返してきたという経緯もあって、最初は半信半疑でしたが、漢方薬の効果を実感してからは、治療にもずいぶんと積極的になりました。
やがてWさんは、打ち解けた医師に、夫との気持ちのすれ違いに長年悩んでいたことを告げました。数年ごとに再発する円形脱毛症の原因は、この精神的ストレスによる気の滞りだったことが確認されたのです。
医師に話したことでストレスが解消されたのか、Wさんの症状は一気に快方に向かいました。
それから半年ほどでWさんの円形脱毛症は完治しましたが、今でも予防のために同じ薬を飲んでいるそうです。
現代病名:円形脱毛症
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
ある日、行きつけの美容院で500円玉程度の円形脱毛症を発見されたKさん(50歳・女性)。すぐに皮膚科を訪れたところ、そこは漢方も処方する医院でした。
めまいが多いことや、よく夢を見て熟睡ができないなどのKさんの訴えから、医師が初めに提案したのは桂枝加竜骨牡蛎湯での治療でした。
しかし、Kさんは外用薬
も一緒に処方してくれないと安心できないと言います。治療へのストレスがあっては思ったような効果が得られないと考えた医師は、西洋薬の塗り薬と桂枝加竜骨牡蛎湯を処方することにして、あわせて食事面でのアドバイスも行いました。
こうして2ヵ月後には、Kさんの円形脱毛症はすっかり治りました。
Kさんは、漢方薬の効果はもちろん、塗り薬も処方してくれたおかげで、安心して治療に専念することができた、と喜んでいるそうです。
現代病名:円形脱毛症
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
やせ型のR子さん(32歳)が初めて漢方を扱う医師のもとを訪れたときは、両脇を姉と夫に支えられなければ立っていられない状態でした。
R子さんは、お産の後、激しいめまいに襲われ、その後もめまいが続いて1年たってもなくならなかったそうです。
その間、めまい外来をはじめ、内科、婦人科、心療内科とドクターショッピングを続け、最終的に鬱病と診断され、抗鬱剤を投与されました。
しかし症状は一向に改善されず、それどころか、気分の落ち込みはますますひどくなり、日常生活にも支障を来すほどになったのです。そこで、夫が漢方の本を見て「これしかない」と、漢方を取り入れている医師のところに連れて行ったのです。
漢方の診察で、R子さんのめまいは、8月に冷房を強く効かせた部屋でお産をしたため、全身に冷えがたまったことが原因と診断されました。この冷えにより、水が頭にのぼって滞り、めまいを起こしていたのです。
この診断に基づき、冷えを解消し、めまいを抑える加味逍遥散と、動悸を抑える桂枝加竜骨牡蛎湯が処方されました。
そして、「あなたは鬱病ではありません」という医師の一言に、R子さんはその場で少し元気になり、何と帰りは自分1人で歩いたそうです。
漢方薬を飲み続けた結果、症状は2週間で治まり、1年ほどでR子さんはすっかり元気になりました。
現代病名:自律神経失調症
漢方を処方する病院に、夫同伴でやってきたAさん(32歳)が、初めに訴えたのは、冷え症治療でした。しかし、問診をしていくうちに、Aさんには冷え症だけでなく、軽度のヒステリーが隠されていることが分かりました。
聞くと、普段から不眠や不安にさいなまれており、食欲も不振とのこと。1人で電車に乗ろうとすると体調が悪くなるので、夫同伴で来院したといいます。
不眠と不安、虚弱体質、おなかに触れるとトクトクという拍動が感じられることから、Aさんには甘麦大棗湯と桂枝加竜骨牡蛎湯の2つが処方されました。
服用しはじめて2週間もすると、電車に乗っても大丈夫かもしれないという気持ちがわくようになりました。徐々に考え方も前向きになり、不安や心配事を抱え込むことがなくなってきたのです。2ヵ月を過ぎるころには、電車に乗っても体の不調が起こらなくなり、家族の同伴がいらなくなりました。
1年後、Aさんはすっかり明るく変身し、はつらつとした毎日を送っています。
現代病名:ヒステリー