ここに記述した文書は、すべて医師または薬剤師の漢方薬処方箋解説です。医薬品購入使用者の口コミ情報ではありません。
【十全大補湯の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。
56歳、女性。
身長156cm、体重62㎏。主訴はC型肝炎。インターフェロンによる副作用からか、体のあちこちに内出血、口腔も出血しやすくなっている。血小板20000個/㎜3。疲れやすく、物忘れもする。
口が苦く、舌苔あり、のどが渇くが、水はのみたくない。舌苔等から柴胡剤も考えられるが、脈が全体に細く、特に左関上と尺中が特に虚していることや主訴を考慮し、十全大補湯を投与した。服用1ヶ月くらいから、体調がよくなってきてお'り、血小板も少しずつ増え、1年8ヶ月後の現在、日常生活に支障ない程度になり、目下続けて服用中。
現代病名:肝炎
42歳、女性。
疲労感を訴える患者。少し動くとすぐに疲れてしまい、体がだるくてしょうがないという。内科、婦人科などの医院を受診し、貧血と診断される。造血剤を服用したが、あまり効果がないため、漢方薬の服用を希望している。体は中肉中背であるが、顔色は青白く血色がよくない。胃腸は正常で便秘や下痢もない。気血の両虚と考え、十全大補湯を投与した。服用1ヶ月後には、顔に赤みが差し、疲れをそれほど感じなくなってきた。更に2ヶ月の服用により、貧血も改善された。
現代病名:疲労倦怠、貧血
製薬会社に勤める男性(30歳代)が、顔に黒いしみができたといって漢方研究医のもとを訪ねました。
しみは、眉間にそばかすのように現れ、過労になると色が濃くなり、体調が良好なときは薄くなるというものでした。男性は、自身が薬を扱う仕事でもあり、かなり神経質になっていて、人と会うのが苦しい状態だったといいます。
男性は、身体的にあまり特徴がない中で、腹直筋がピンと張っていましたが、これはしみとは直接関係せず、むしろ精神的ストレスによる心身症と診断されました。女性なら加味逍遙散が使われるところですが、男性なので十全大補湯が処方されたそうです。
服用を続けた結果、1ヵ月ほどたつと、しみはだいぶ薄くなり、さらに3ヵ月もすると、ほとんど分からないほどに改善されたのでした。その後は、漢方研究医の腹診に基づき、十全大補湯を柴胡桂枝湯に替え、体質改善を目的に今でも漢方薬を服用しているそうです。
現代病名:しみ
大柄でよく笑うTさんは60歳の主婦です。閉経後に太りだし、同時に肩こりに悩まされるようになりました。あまりにひどい肩こりは乳がんの疑いがあると友人から聞いたTさんは、心配になり乳腺専門の医師のいる大きな病院へ行ってみました。すると、左の乳房に乳がんが見つかったのです。
幸いほかの臓器に転移はなかったものの、左の乳房は完全に切除しました。
手術後、抗がん剤と併用して、貧血気味なので十全大補湯に生薬を加味したものを処方してもらっていました。術後5年の今では抗がん剤の使用も終わり、毎年1回の検診でも異常はなく、漢方薬では当帰芍薬散を飲んで元気にしています。
現代病名:乳がん
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
小学校教諭のAさん(44歳・女性)は、2年前に胸のしこりを発見し、病院で検査を受けたところ、1期の乳がんと診断されました。
医師からは温存療法も可能との説明を受けましたが、再発・転移をおそれたAさんは、乳房切除術を選択しました。ところが、手術後は激しい倦怠感と食欲不振に悩まされ、術前に60㎏近くあった体重が40㎏台まで減少してしまったのです。
そこで、退院後、漢方薬局を訪ねたところ、薬剤師に十全大補湯を勧められました。指示どおりに1日3回服用していたところ、2ヵ月ほどで食欲が出はじめ、体力も徐々に回復してきました。
術後半年ほどで教職に復帰したAさんですが、今では生徒たちと一緒に校庭を走り回れるほど元気になったそうです。
現代病名:乳がん
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
Fさん(25歳・女性)はだるさが取れず、疲れやすくて根気もありません。のどが渇くので、いつも水を飲んでおり、足もむくんでいました。さらには、食べると下痢をするという状態です。
そこで近くの漢方薬局で相談したところ、六君子湯と十全大補湯を処方されました。胃腸を丈夫にして、水分代謝をよくするという漢方薬です。すると、半月でむくみが取れ、下痢も治り、だるさも消えました。その上、ざらざらしていた肌もキレイになり、思わぬ効果に大喜びでした。
現代病名:だるさとむくみ
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
半年ほど前から貧血などによる体調不良に悩まされていた自動車メーカー営業課長のEさん(53歳)は、社内検診で血小板の減少など、血液の異常を指摘されました。
不安になったEさんが大学病院で精密検査を受けると、急性白血病との診断。その後、入院を指示され、抗がん剤治療を受けたのですが、吐き気や全身
の脱力感などの副作用がきつく、治療を続ける気持ちが徐々に薄らぎ、生きる希望も失いかけていました。
そこで、担当医師が同じ病院の漢方を扱う医師と相談したところ、十全大補湯の併用を勧められました。Eさんがすがる思いで服用しはじめると、次第に食欲が戻り、体力も回復し、6ヵ月ほどの治療の後、職場にも復帰できたのです。
白血病といわれたときは死を覚悟したEさんですが、今は前向きな気持ちで人生を謳歌しています。
現代病名:白血病
青果店を営むW代さん(37歳)は、毎日忙しく立ち働いていましたが、昨年胃潰瘍で手術を受けて以来、体力がめっきり落ちてしまいました。
店に出ても貧血でくらくらし、食欲もないことが多く、無理な仕事など、とてもできない状態です。
青果店ですから、ホウレンソウは毎日扱っています。貧血を意識するようになってからは、売れ残ったホウレンソウを晩のおかずによく使うようにしましたが、そう簡単に貧血は改善しません。
そこで、漢方療法を実践することにしました。漢方に詳しい専門の薬局に行き、症状を話すと、十全大補湯という漢方薬を処方されました。
5ヵ月ほど服用を続けるうちに、疲れが取れ、以前の体力を取り戻してきました。
現代病名:貧血
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
看護師のMさん(51歳・女性)は、のどが痛んだので、勤務先の漢方を処方する医院でみてもらったところ、咽頭炎を発症していると診断されました。
20代の看護師Tさんも同様の症状で、二人とも虚証タイプだったため、麻黄附子細辛湯と桂枝湯が処方されました。
しかし、Tさんが2、3日で治癒したのに対し、Mさんは改善せず、処方を柴胡桂枝湯に変えてもらったのですが、やはりかんばしくありません。実は、Mさんは医院の休診日に夫の実家で介護をするなど、休息が取れない状況で、体力が落ちていたのです。
そこで、柴胡桂枝湯に十全大補湯を加えて処方してもらい、3日間服用したところ、症状はすっかりなくなりました。
現代病名:咽頭炎
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
大手家電メーカーの経理課長を務めていたEさん(63歳)は、2年前から腹部の痛みに悩まされていました。定年をきっかけに病院で精密検査を受けたところ、腹腔内の腸間膜にかなり進行した悪性腫瘍が発見されたそうです。
担当医は、早急に摘出手術を試みようとしましたが、腫瘍を摘出すると大出血の恐れがあるため、開腹してもすぐに閉じてしまう成り行きになってしまい、その後の抗がん剤治療もほとんど効果がありませんでした。
医師から余命3ヵ月との告知を受けたEさんの奥さんは、質の高い余命を全うさせたいと考え、知り合いの漢方薬局で相談すると十全大補湯を勧められました。
Eさんに服用させたところ、食欲が出はじめ徐々に体力も回復し、昨年は日帰りの旅行にも出掛けられるようになったのです。
医師の告知から2年以上経過しましたが、Eさんは今も前向きな闘病生活を送っています。
現代病名:悪性腫瘍
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
胃がんが再発して、手術はできず、抗がん剤を投与されたHさん(64歳・男性)は、貧血がひどく、吐き気がして、まったく食欲がなくなり、抗がん剤を使えなくなってしまいました。
副作用さえ出なければ、抗がん剤が大変効くタイプのがんであったので、なんとかしたいと漢方の専門家を訪れました。
そこで、人参湯と十全大補湯を処方され、服用したところ、だんだん副作用が出なくなり、抗がん剤治療を無事受けることができたそうです。体重も48㎏まで落ちていたのが58kgにまで回復し、希望が持てるようになったということです。
現代病名:胃がん
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス