【猪苓湯の臨床効果に関する・エビデンス】…根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine)です。
●対象:排尿障害を訴える統合失調症患者40例で、男性17例、女性23例、平均年齢41.1歳。
●方法:猪苓湯投与2週間後の判定で効果がみられなかった症例については増量した。
また、猪苓湯投与前から臭化ジスチグミンが投与されていたが、その効果が無効の重症例(7例)については、猪苓湯を追加投与した。
猪苓湯の投与期間は1ヶ月であった。
排尿障害の重症度は、患者が訴えた頻尿、排尿困難、排尿時不快感残尿感、排尿痛などの自覚症状の程度から、軽症中等症、重症の3段階に分けて評価した、症状改善度の評価は、著明改善、中等度改善、軽度改善、不変悪化の5段階で、投与1ヶ月後に判定した。
ポイント:排尿障害の改善度については、猪苓湯単独群(33例)では、著明改善が22例、中等度改善が3例、不変が8例、軽度改善と悪化例はなく、中等度以上の改善が75.8%を占めた。
また、臭化ジスチグミンに猪苓湯を追加併用した群(7例)では、著明改善3例、中等度改善1例、軽度改善1例、不変2例、悪化例はなく、中等度以上の改善が57.1%を占めた。
参考文献:漢方医学,20:153-158,1996.
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【猪苓湯の症例・治例】…次の症例に近い病症の方は、本方剤をお奨めします。
77歳、女性。
九州福岡在住。年に1、2回上京して、当薬局近くの娘さんの所に滞在する。あるとき上京中、一日中だるくて、特に両足に力が入らないので寝ているという。ご主人を亡くして2年目。娘さんの話では、福岡の主治医は高血圧と鬱病という診断とのこと。カラン、アバン、セレナール、アドナ、カルシウム拮抗剤などが出ていて、新薬の相互作用も無視できない。
本人は、153cm、52㎏。顔に生気がなく、サンダルを引きずってきた。食欲はふつう1日3回食べる。大便は1日1~2回、小便は日中10回以上で、夜は2時間おきなので煩わしい。舌は微白苔で乾燥。目も乾き瞼が熱く、麦門冬湯をのむと調子よい上、夜の小便が減少してよく眠れるという。新薬をのんでからは、汗が多く、時に頭痛もするという。
あまり自信はなかったが、猪苓湯と香蘇散の交互服用とする。服用初日は、大便1日8回。だが下痢ではない。2日目は6回、3日目は3回出て、身体がすっかり軽くなり、足を引きずって歩くことはなくなった。自信がでて、新薬は次第に減らしたようである。福岡へ帰られてからは薬は郵送している。血圧は下がり、目の乾燥は治り、よく眠れて大便も正常になった。以後、約1年間経過。1ヶ月分の漢方薬を3ヶ月くらいにのみ延ばしている。猪苓湯は尿の不利と煩があり不眠の傾向がある。香蘇散は鬱傾向に効果がある。
現代病名:鬱病
65歳、女性。
隣町に住む農家の主婦である。尿の出が細く、排尿痛と残尿感があり、すっきりしない。仕事上、シートをひいたコンクリート床で作業をすることが多い上にトイレもがまんしている。腰より下が冷える感じがする。体格、肉付きは普通である。
まず、排尿時の苦しみを取ることを目標にして、猪苓湯とナリジクス酸を与えた。排尿痛がとれてきたら、ナリジクス酸の服用を止め、猪苓湯単味のみの服用とするように指導、仕事の時も床の冷たさが直接体に伝わらぬように工夫してもらうようにした。
後日、来店された際に聞くと痛みは消失し、残尿感もほとんど消えていた。
現代病名:排尿痛
医師のSさん(60歳・男性)は、過去に何度か尿路結石を患い、再発するたびに薬を用いて治療をしていました。
そしてある日、腹痛を感じてトイレに行くと血尿が出てしまいました。同じ医師仲間で漢方薬を用いて治療を行っているT医師に、以前から「漢方薬で結石治療をしてみたらどうか」と勧められていたこともあり、Sさんは、そのT医師に相談してみることにしました。
T医師から勧められたのは、芍薬甘草湯と猪苓湯でした。さっそくこの2つを朝夕交互に飲みはじめると、やがて結石が尿とともに排出され、服用から10日目には血尿が完全に消えました。その上、血圧も安定し、体調もすこぶるよくなったのです。
それからというもの、結石の再発予防と体調管理のため、1日1回猪苓湯を飲み続けているそうです。
現代病名:尿路結石
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
50代前半から残尿感に悩まされていた名古屋市の個人タクシー運転手・Sさん(57歳)が、3年前に市内の病院を受診すると前立腺肥大症との診断を受けました。
その後、薬物治療を続けていましたが、症状は一向によくならないどころか、車の運転中に何度も尿漏れを経験するようになりました。
病院の担当医師からは、前立腺の切除手術を勧められたそうですが、できることなら切らずに済ませたいと思っていたSさんは、すがる思いで漢方薬局に駆け込んだのです。すると八味地黄丸と猪苓湯を処方され、「体を冷やさないように……」という指導を受けました。
以来、体の保温に気を付け、その2つの漢方薬を半年間服用したところ、尿の出が非常によくなり、今では尿漏れもほとんど認められなくなりました。
また、食欲もわき、持病の腰痛・肩こりも軽くなってきたそうです。
現代病名:前立腺肥大症
65歳になるY子さんは、半年前に腰が痛み出し、血尿が出ました。すぐに病院に行くと、腰の痛みではなく尿路結石による痛みとの診断結果でした。鎮痛剤を処方され、痛みは和らぎましたが、石は出ず、腰の鈍い痛みも取れずにいました。
その後、知人から尿路結石には漢方が効くと聞き、早速漢方の専門家を訪ねました。
処方されたのは八味地黄丸と猪苓湯で、1ヵ月ほど服用していると腰の痛みが和らいで、血尿もなくなり、石がなくなったように感じてきました。
薬を飲み続けて半年ほどたったとき、急に下腹部が痛くなり、再び専門家に相談したところ、石が下りてきているのだろうといわれ、痛み止めに芍薬甘草湯に附子を加えたものを処方されました。痛みは薄らぎましたが、数日後の夜にまた痛みだし、1晩中苦しんで、真っ赤な血尿とともに、ついに石が出たのです。石が出た後は腰も下腹部の痛みもうそのようになくなり、漢方の効き目を実感したそうです。
現代病名:尿路結石
米国人で大学教授のA氏は、背中と腰が激しい痛みに襲われ、都内の大学病院で診察を受けると腎結石という診断です。すぐに入院し、鎮痛剤や鎮痙剤の投薬治療を受けると、1週間ほどで痛みが緩和し退院許可がおりました。
その際、医師からは「水を毎日たくさん飲むように」という指示を受けただけで、薬の処方や外来治療も特別に必要ないということでした。
ただ、結石は体内に残ったままだったので、また、いつ再発するかと心配になり、漢方薬局で相談すると、猪苓湯を処方されました。
薬剤師の指示を守って毎日服用したところ、2ヵ月間で結石が尿とともに体外に排出されました。
その後、6年近く経過しましたが、再発もなく、元気に教壇に立っています。
現代病名:腎結石
Sさん(40歳・女性)は、尿道炎と診断されて抗生物質による治療をしているにもかかわらず、頻尿や排尿痛といった症状がまったく改善しないことに悩んでいました。
そんなある日、Sさんの状態を見かねた友人が漢方薬も処方している内科医院を紹介してくれたのです。
Sさんはさっそく紹介された内科を訪れました。そこでの尿検査では多少の白血球増加が認められ、わずかに細菌の感染が心配されましたが、抗生物質が効かなかったという経験があったため、漢方薬での治療を進めることとなりました。
Sさんに処方されたのは、水のめぐりを改善する猪苓湯でした。朝昼晩と1日3回飲んで、2週間もすると、かなり頻尿が改善されてきました。
以降、2週間ごとの来院のたびに肌の色つやがよくなり、体調が整ってきていることが周囲にもよく分かるほどでした。
その後、3ヵ月もするころには、つらい症状はすっかりなくなり、表情や人がらも明るくはつらつと変わっていました。
現代病名:尿道炎
中学教師のAさん(36歳・男性)は、半年前に背中とわき腹の激しい痛みに襲われ、都内の大学病院で診察を受けました。腎結石と診断されて、すぐに入院しましたが、鎮痛剤などの投薬治療を受けて1週間ほどで退院できました。
そのさい、医師に「結石はまだ体内にとどまっているので、いつ再発してもおかしくありません。水を毎日たくさん飲んで早く排出してしまいましょう」と言われたAさんは、退院後は毎日多めに水分を取っていました。しかし、1ヵ月後に再び激しい発作に襲われたのです。
そこで、Aさんはすがる思いで自宅近くの漢方薬局を訪れました。薬剤師は、Aさんには尿路や尿管の緊張を緩め、結石を体外に排出しやすくする猪苓湯が合っていると判断し、3週間ほど服用を勧めました。すると、10日ほどで結石が尿とともに体外に排出されました。その後は再発することなく、Aさんは、元気に教壇に立っています。
現代病名:腎結石
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
若いころから尿路系が弱かった、Sさん(44歳`男性)は、この冬、突然、尿の出が悪くなりました。
病院で検査を受ける時間がなかったので、会社の近所の漢方薬局で、猪苓湯を処方してもらい、2週間ほど服用すると、尿の出がよくなり、腰の周囲のこりもスーツと消えました。
現代病名:残尿感
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
刺しゅうが趣味の主婦、E子さん(47歳)は排尿のたびに痛みと残尿感があり、近くの医院で診てもらうと、無菌性の膀胱炎といわれました。
刺しゅう仲間から漢方薬がよく効くという話を聞き、漢方薬で治したいと思い、相談に訪れました。症状を聞くと、尿に少し血が混ざっているといいます。
体が
冷えるともいうため、猪苓湯という漢方薬を処方したところ、3日ほど飲み続けて排尿が正常に戻りました。痛みもなく、すっきりしたとのことでした。
漢方では、膀胱炎は下半身のかぜのようなもので、冷えが原因すると考えます。
そのため、体を冷やさないことが大切です。冷たい飲み物などはできるだけ控えるようにするとよいでしょう。
現代病名:膀胱炎
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス
主婦のEさん(47歳)は、若いころから冷え症に悩まされていました。特に下半身の冷えがひどく、年に2、3回は膀胱炎にかかっていました。
そして、その年も9月に2回目の膀胱炎にかかり、頻尿や排尿痛、残尿感、血尿とともに、足が冷えて下半身がだるいという症状が現れました。
Eさんはすぐにかかりつけの病院を訪れ、抗生物質を出してもらって服用しましたが、薬が効きません。長年、繰り返し膀胱炎にかかり、たびたび抗生物質を服用していたため、薬に対する耐性ができてしまったのです。
そこで、インターネットで近隣の漢方を取り扱う薬局を検索して、みてもらうことにしました。
Eさんは、腎臓機能が衰え、冷えて下半身が弱っていましたが、胃腸機能は正常で、食欲もあったため、猪苓湯合八味丸が処方されました。
すると、服用を始めてわずか2日目で、腰のだるさや足の冷えが取れて尿量が増え、頻尿や排尿痛などの症状がきれいに治ったのです。
現代病名:膀胱炎
出典:「漢方LIFE」 発行所:DeAGOSTINI(2005) 担当医師アドバイス